農商務省特許公報に曰く(特許第二五六八〇号)
本発明は普通蓄音機の如き「ゼンマイ』及び歯車の如き破損摩滅し易き構造を用いず、
耐久力を大ならしめ手力の仕事は全く普通蓄音機の「ゼンマイ」を捲くと同一にして価格低廉構造堅牢なり
音声は蓄音機の生命であります。明瞭に聞こえなければ使用できません。音声が原音に近いことは普通の蓄音機の及ぶところではありません。如何に乱暴に取り扱いをしても発音に変化がないように造ってあります。
動力:クトウ蓄音機の動力は手回しです。普通の蓄音機には「ゼンマイ」と歯車とを用いておりますが、すぐに切れたり減ったりして高価な修繕料が度々要ります。クトウ蓄音機はこんな破損するような所は一つも用いませんから、修繕料は全く要りません。それに手のほうが、いくら速く廻しても音譜板の方は一分間八十回位の速さに廻って一定不変です。このために音調が斉一になるので今まではこの発明がなかったから手廻し蓄音機がなかったのです。
手力:手廻しといっても、少しも力は要りません。指一本のちからで廻ります。三百匁ばかりの分銅が「ハヅミ車」となって子供にも軽く取り扱えるようになっております。熟練などは少しも要りません。
耐久力:前述の如くに歯車「ゼンマイ」がなく、消耗物としては一本の調革があるばかりです。調革は「ミシン」に用うるもので、毎日激しく使っても五六年の寿命があります。また五六年五取替ても十銭以内の費用で足ります。その他の部分は永久に使用されます。簡単に出来てるから堅牢なのであります。
音譜板:複写板には不良のものが多くありますから、かえってご損です。原盤は発音明瞭で寿命も長いです。
金一円二十銭の原盤が最もお得用に出来ております。
音譜板の寿命は発音函(針先)の重量によりて違います。すなわち重量が軽ければ、軽いほど寿命が長くなるのであります。
クトウ蓄音機の発音函の重量は二十五匁で、普通蓄音機のは三十五匁でありますから十匁程軽いのです。これがために実験上音譜板の寿命は約二倍になります。すなわち普通複写盤は三百回位使用できますが、クトウ蓄音機にては六百回以上保ちます。この発音函で軽くても発音が明瞭なることは特別の発明を用いた点で、クトウ蓄音機独特のものであります。
安価なる理由:従来の蓄音機は欧米人の生活程度によりて設計したものを安価に造ろうとしたから外見ばかり立派で、修繕料が度々かかるのです。クトウ蓄音機は数年間研究の結果、根本から新たに発明した簡単堅牢な構造を用い、明瞭なる音声を出す実用主義のものであります。それに材料と手間賃で売り出してるので、これが何人も及ばない安価な理由です。
年代:大正
メーカー:藤屋商会
型番:クトウ蓄音機
価格:9円(大正7年)
タイプ:卓上型
サイズ:長さ:一尺二寸 幅:八寸 高さ:一尺 重量:約一貫匁
-
ニッポノホン15号
(小型) - ニッポノホン17号
- ニッポノホン22号
-
ニッポノホン35号
(後期型) -
ニッポノホン50号
(後期型) - モモタロー蓄音器 小器
- モモタロー蓄音器 大器
- ユニック
- ホノラ
-
グランドノラ
(グランドニッポノラ) - ニッポノラ(改良扉付)
- 二号ユーホン
- ニッポノホンポータブル
- ハーモニー
- シンホニー
- 二号シンホニー
- オークホノラ
- ホノラ(後期型)
- グランドノラ(後期型)
- 電気蓄音器 エレホノラ
- スタンダード 1号
- スタンダード 3号
- スタンダード 4号
- スタンダード 6号
- スタンダード 7号
- スタンダード 8号
- スタンダード 10号
- スタンダード 11号
- スタンダード KI号
- スタンダード 60号